薬物依存症
「薬物依存症」の問題は、司法的問題として扱われることが多かったのですが、薬物依存症は、世界保健機構によって認められた、れっきとした精神障害の一つです。そして、依存症薬物の中には、大麻、有機溶剤、覚せい剤などの違法性薬物だけではなく、病院で処方される安定剤、睡眠薬、風邪薬、頭痛薬など実に様々な種類があります。
意思が弱いために起こる問題ではなく、脳の機能的、構造的変化により薬物をコントロール出来なくなると考えられています。そして、その背景には、生きづらさを抱えていたり、社会生活上の苦痛を持っている場合が多いとされています。
依存症からの回復は、長いプロセスが必要ですが、まず初めのステップは、安心し、自分の本音が語れる場を見つけることです。当院の外来では、そのような安心、安全感を提供できるように努めています。
第2のステップは、体から安全に薬物を抜く治療(解毒治療)を行います。対象となる薬物によって外来で行ったり、入院で行ったりしますが、離脱症状が強い場合には、入院環境で行うことがあります。その場合には、期間は約1ヶ月から2ヶ月となります。
第3のステップでは、薬物の再使用を防ぐための、認知行動療法と呼ばれる心理療法による治療プログラム【STEM(PDF)】に参加したり、批判されずに自分の体験を話したり、他人の経験を聞く、同じ病気を持つ人とのグループミーティングに参加します。
このようなプログラムを通して、依存症問題を少しずつ話せるようになれば、地域で行われている自助グループ(ナルコーティック・アノニマス:NA)へ参加して回復を続けます。また、リハビリ施設(ダルクなど)での回復を勧めさせていただくこともあります。